昭和末期、レンタルCDショップが町に増え始めたころ、それと歩調を合わせるように、パソコンソフト、主にゲームソフトのレンタルショップも姿を見せるようになった。
当時、私は中学生だった。
岐阜にあった「M」という店によく足を運んでいた。
店はビルの2階にあり、最初のころは、階段を上がるだけでも少し緊張した。客層の中では、おそらく自分はかなり若いほうだったと思う。
それでも、何度か通ううちに、その緊張にもすぐ慣れてしまった。
レンタル料は、定価の1割。そしてソフトと一緒に、当たり前のように「ファイラー」のディスクが渡される。
ファイラーとは、簡単に言えば、コピーツール用の「タイトルごとの専用パラメータ」のようなものだ。
特に詳しい説明書が付いているわけでもない。けれど、何となく使えてしまう。そういうものだった。
今の感覚で言えば、およそ「行儀が悪い」では済まされない。
だが、当時は法整備も未熟で、そうした店が普通に町の中に存在していた。
店頭に並んでいたタイトルの多くは、やはりPC-88用だった。
当時、私が使っていたのはFMシリーズだったので、店頭に置かれるタイトルは少なかった。
それに、どうしても欲しいソフトは、できればパッケージで持っていたいという気持ちもあった。
そのため、足しげく通って棚を眺めていたわりには、実際にそこで借りたソフトの記憶はほとんど残っていない。
それでも、店内の雰囲気や、店主の顔は今でもよく覚えている。
薄暗い階段、棚に並んだパッケージ、独特の緊張感。
あの空気だけは、不思議なくらい記憶に残っている。
その後、著作権法が改正され、こうした店は軒並み姿を消していった。
ある店は閉店し、ある店は中古販売や買取を表向きの商売として、静かに鳴りを潜めていった。
先日、かつて「M」があったビルの近くの公園を訪れた。
春の陽気の中で、ふと、あのころのことを思い出した。
あの店で何を借りたのかは、もうほとんど覚えていない。
けれど、階段を上がるときの少しの緊張と、棚の前でソフトを眺めていた時間だけは、今でも妙にはっきり覚えている。
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Artist: BARBEE BOYS
Album: LISTEN! BARBEE BOYS 4